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ファランクス





「おはようございます。今日の講義は、前回の最後に言ったとおり舞台を古代へ移して行うということになります。今回は、ファランクスとレギオンを中心に説明しましょう」





「.。oO(ファランクス…

ファランクス
アメリカのレイセオン・システムズ社製艦載近距離防空システム(CIWS)Mk.15 ファランクス(Phalanx)のことだな。20mmタングステン弾芯のAPDS(装弾筒付徹甲弾)ではストッピングパワーと有効射程(1,500m)に々物足りなさを感じる。やはり海自もゴールキーパーのような30mmクラスのCIWSが望ましいだろう。しかし当面はこれを使い続けるしかないが、Block1Bへの改装を早期に進めて欲しいものだ)」





「.。oO(ファランクス…

ファランクス2
GBAにも移植されたSFCの横スクロールシューティングね(元々はX68000版だったかな)。GBAはボムが導入されてぬるくなっていはいるけれども、なかなか楽しませてくれる佳作STGと言えるわね)」





「.。oO(レギオン…

レギオン
『ガメラ2 レギオン襲来』に登場した怪獣のことだな。平成ガメラシリーズの中でも、なかなか私好みの作品だった。自衛隊の協力があっただけあって、ゴジラとは違い自衛隊が活躍するシーンが多かった気がする。90式戦車の撮影シーンが富士演習所内だったり、F-15の最高速度に合わせてレギオン飛行形態の飛翔速度が変更された点には苦笑させられたが」





「.。oO(レギオン…

カオスレギオン
PS2の『カオスレギオン』に出てくる召還獣のことかな。たしか三国無双の武将がスタンド使いになったようなゲームだったわね。まったくやる気のないクソ声優の棒読みムービーに萎えたけど、ゲーム自体のデキはアクションゲームとして良くできているし、難易度が低すぎで簡単にクリアできる点を考慮しても、良ゲーと言っていいでしょうね)」





「どうしましたか?」





「CIWSや怪獣が古代の戦術と何の関連性があるのだ?」





「セイバーって意外にゲーム好きなんだね」





「???」





「まぁいい。ちょっとしたお約束というやつだ。説明を続けてくれ」




「わ、分かりました。続けましょう。そうですね、ではファランクスについてですが、この戦術…というか戦闘隊形は、古代ギリシアのコリントスやアルゴスで生まれました。このファランクスのような特異な戦闘隊形が生まれた背景には、地中海世界の環境に起因すると考えられます」





「地中海って言えばオリーブとかブドウなんかをよく栽培しているところよね~。気候も温暖だしいいところよ」





「環境と言っても、そんなことは関係ないだろう」





「いえ、それが非常に重要な要素になるのです」





「ハァ?いったいどういうことだ?」





「それを説明するには、当時の戦争の形態について知ってもらう必要がありますね。古代、特に農業を基盤とする定住性共同体間の抗争で、最も基本的な戦略は何であるか分かりますか?」





「殴り込み?」




敵経済基盤の破壊といったところか」




「そうですね。そんなところです。小規模な襲撃を長期間にわたって忍耐強く巧妙に行い、時には精緻な外交戦を絡めつつ、 数年間、場合によっては数世代にわたって続けることです。焼討、収奪等で農耕地を破壊すれば、敵は収入源を失い飢餓に陥る可能性すらあるのですから」




「そんなセコイ手を使わなくても、軍隊で蹂躙すれば手っ取り早くていいじゃない




「そのような強力な軍事力を得られる国は強大国だけですし、そもそも、そんな力があれば戦争するまでもなく勝負は決まってしまいます。古代ではよほどリソースを集中しなければ、そのような軍事力を持った軍隊を維持できませんでした。そしてそれが可能なのは、一握りの強大国ということです」




「比較的弱体な勢力が争う場合、お互いに決定力不足であるから一種の消耗戦略をとらざるを得ないということか」




「とらざるを得ないというよりも、より効率的ということです。このような消耗戦略ならば、軍隊として小規模で多様な戦闘に対応可能な軽快部隊を基幹とした編成になります。この軍隊は、大規模な野戦軍と比較して、正規の戦闘では弱体ですが、維持コストが極めて小さくなります。しかも、野戦軍は地域の制圧は出来ても、継続的に支配することできません。その為には、小規模で低コストの軽快な軍隊こそが必要でした」





「そうした事情ならば、戦場での運用に特化した兵科をわざわざ編成する意義も必要性もない。戦場での戦術遂行のための訓練や演習もそれ程重視されなかっただろうな」





「う~ん…でもさぁ、古代にだって大規模な野戦はあったわけでしょう?」




「もちろん、野戦の優先順位が低いからといって無視する訳にはいきません。ですが野戦で敵を撃破するための戦術的兵科と、小競り合いのための戦略的兵科はお互いに相容れない部分が少なからずあります。 であるからこそ、それぞれの戦略的環境によって、必要とされる軍隊を整備する訳です」





「たま~に起こる大規模野戦に備えて軍隊を養成すると、コストが掛かりすぎる上に柔軟性に乏しいため他の任務に使いにくい。かといって安くて便利な小競り合い用の軍隊ばかりだと、野戦が起これば簡単に蹴散らされる…ホント難しいわね」





「前者を重歩兵、後者を軽歩兵として分類するとして、簡単に使い勝手の違いをまとめると…


機動力展開力地形踏破能力戦力の集中性縦深性均質性指揮統制の効率性
重歩兵×××
軽歩兵××××


こういった感じになります」





「具体的には、どのような解決策がとられていたんだ?」




諸兵科連合(コンバインド・アームズ)。軽装の兵科を組み合わせ、野戦においてもそこそこの戦闘力を発揮できるようにすることが一つの解答でした。普段は、小競り合い部隊として広く展開させ、野戦を行う場合に集結して野戦軍を編成しました」





「軽装歩兵、軽装騎兵、戦車といった、およそ戦場での独立的な運用に向かない兵科にそれぞれ戦術的役割を分与し、各兵科固有の弱点を補い利点を助長することによって戦術遂行能力を高めるという理屈だな」





「はい。主にアジア・アフリカにおいてこのような形態が見られました。広大な生活圏を持ち、またそれ故にある程度の規模の野戦軍を編成可能な国力の整備をいち早く達成できたからです。古代において軽装備の兵士が主流となった理由は、技術的なものでも経済的なものでもなかった訳ですね」




「それにしても、畑を焼討したり村落を略奪したり…軍隊っていうよりも野盗の集団ね」





「それが古代の戦争です。生産力の低い古代では、非生産人口を現代のように大量に養うことは不可能ですから、社会を成り立たせる経済基盤を攻撃されるのが非常に大きな打撃になると考えてください」





「堂々たる大軍団が勇敢に敵部隊と刃を交えるってイメージは古代では幻想なのね」





「いえ、必ずしもそうとも言えません。ここで話を戻しますが、アルクェイドさんの言ったオリーブとブドウが主要な農作物であるギリシア地方の環境が、その地域の軍隊の有り様を規定することになったのですが…。意味は分かりますか?」





「全然…」





「生木は松明程度の火力では簡単には燃ません。オリーブもブドウも成長するに従って根を地中深く張るため、伐採や伐根も相当な手間が必要でした。これでどうですか?」





「???」




「短時間のうちに手早く片づけなければならない小規模な襲撃部隊では、オリーブ畑やブドウ畑の機能に致命的な打撃を与えることはできない。 つまり、農耕地を襲撃する際に最も有効な手法である焼討が通用しないってことか」




「ということは、野戦軍での決戦で白黒つけるしかないってこと?」




「そうです!経済力の削り合いによる消耗戦略が不可能である以上、有力な野戦軍でもって敵主力を撃滅し、無力化することがギリシア地方における唯一の戦争の様式になります。そして、その決戦主義の権化として現れたのが、ファランクスでした」





「何十年もネチネチと焼討合戦やってるより、分かり易いし派手でいいかもね」





「派手と言えば確かにそうですね。何せ盾と槍で武装した男達が密集陣を組み、お互いに正面からぶつかり合う戦いですから。転倒でもしようものなら、ほぼ確実に味方に踏み殺されるような戦いになります」





「そんな戦い方では指揮官も指揮のしようがないな」




「指揮官は戦列で最も危険な場所である密集陣の最前列最右翼に位置し、兵と肩を並べて戦ってますから、一旦突撃してしまえば、指揮するというより自ら範を示すため、勇猛な戦士として振る舞うくらいしか出来ません。 それはもう何も考えず遮二無二突進するだけ。それのみが勝利するための方法でした。ファランクスは、まさに『統制された狂気』であると言えます」





「なんだか戦争っていうよりスポーツみたいな感じね」




「そうですね。同じ民族、同じ武装、同じ戦術、同じ隊形の軍隊が正面衝突し、相手の隊列を崩せば勝ちで、追撃戦はしない…確かにスポーツのようなものかもしれません。現代の戦争に比べれば儀礼的な要素も少なからずあったでしょう。しかし、スポーツとはある一点に置いて決定的に異なります




人が死ぬ。それも大量に





「はい…追撃戦はあまり行われなかったのですが、それでも多くの死傷者を出しています」




所詮は戦争ってことね…」




「ところで少し疑問なのだが、ファランクスに必ずしもファランクスで対抗しなければならないことはないだろう?正面から激突するとはいうが、ファランクスも側背を攻撃されることもあるはず。相手だって弱点を突いてくる。必ずしも正面からぶつかり合う必然性はないと思うが」




「その認識は間違いではありません。歩兵密集陣の特有の欠陥として、構造上脆弱な側背を衝かれると一挙に組織的戦闘力が瓦解してしまいます。しかし、実際に戦場で側背を攻撃することは難しいと言えます。なぜならば、ファランクスは方向転換程度の戦術運動は可能でしたし、複数のファランクスが相互に支援しあって側面を防護していたからです」




「ならば、ファランクスの突撃を受け止め拘束、その隙に一部の部隊で側背を突くという戦法ではどうだ?突撃しかできないファランクスは、包囲に弱いだろう」




「それも難しいでしょう。ファランクスとは戦力発揮のためには絶えず前進を続けることを宿命づけられた戦術です。その突撃に純化した戦闘教義を持つファランクスを拘束できるくらいならば、すでにその戦闘に勝利しているようなもの。それが出来ないからファランクスは厄介なのです」




「では、錯雑地形を利用したり、障害物でファランクスの機動発揮を阻害すればどうだろうか?」




「錯雑地形を行軍中に散兵の伏撃を受け大きな被害を被った例は、クセノフォン等によって記されていますが、戦場を選択する権利はどちらか一方にあるわけではなく、当然ファランクス側も平坦で見通しが効く、側面を晒さずにすむ地形を決戦の場に選ぼうとする訳ですから、条件は同じ。そう簡単にはいきません」




ファランクスに対抗するにはファランクスしかないってこと?




「結局、それがファランクスに対抗する最も有効で現実的な手段ということです」





「それではなぜファランクスは廃れていったのだ?」





「やがて地中海世界の覇者となるローマは、ファランクスからレギオンへと戦闘隊形を変えた訳ですが、それを説明する前にしばらく休憩とします」





「それでは、休憩時間に続く~」



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